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とっくに他人じゃないふたりを 世間が他人に させておく
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先日のヤンデレで死ネタの雑伊SS「狂人が見るゆめうつつ
の小ネタです。
後輩視点です。
そういえば、あれ数年後って設定書き忘れてた。
そんなんばっかりですみません;

↓ 保健委員成長パロSS
タイトル:狂人が壊したもの

伏木蔵、乱太郎も左近も数馬も、タソガレドキに近づいてはいけないよ。
お前たちは僕の宝物だから。
だからどうかお前たちまで雑渡さんにとられることのないようにね。
私からの最後のお願いだよ。


そして伊作先輩は、馬上の雑渡さんに抱えられて行ってしまった。
手のない腕を小さく振りながら笑顔で、さようなら、そう言って。
見送る僕たちはただ、伊作先輩の言葉を呑み込むのに精一杯だった。
背後で、食満先輩のうなり声が聞こえた。伊作先輩の手を切り取ったのが雑渡さんでないとしても、それを指示したのが雑渡さんではないとまでは伊作先輩は仰らなかった。
わかっていた、上級生もみんな。
けれどそれでも、伊作先輩はそれを告げなかったのだ。忍術学園のためか雑渡さんのためかその両方か、あるいは僕たちを守るためか。それも痛いくらいわかっておられるのだろう、低学年の後輩たちに聞こえるここでは、新野先生も先輩方も何も、雑渡さんを責める事は仰らなかった。

そして僕は、学園を卒業した。
伊作先輩の言いつけを守りタソガレドキには近づかず、今もまだ平穏に薬師をやっている。タソガレドキの噂は時折聞く、同窓生の中には雑渡さんの生存を教えてくれる者も多くある。

やがて、伊作先輩を直接知る最後の後輩も卒業する春が来て、夏が来た。
戦の狼煙があがる、夏が来た。

「数馬先輩。」
陰のある美青年が不思議と目立ちもせず、夕焼けに染まる草いきれの中から呼びかける。
「繋ぎにしては随分派手だね。」
「お元気そうで。」
「おかげさまで。用意は出来ているよ。」
薬箱と風呂敷包みをポンポンと示した。
「若いのに腕利きで、戦場医として引っ張りだこと聞きましたよ。」
「お前たちより長く伊作先輩に仕込んで頂いたからね。」
ふふと数馬が笑えば、伏木蔵も笑い返す。

「お会い出来るの、楽しみでしょう。」
「ああ、楽しみだなあ。でも怒られるだろうなあ。お前はともかく僕まで言いつけを破るのだもの。」
「酷いな、僕はともかくなんて。ああでも泣いてしまわれるかもしれませんね、伊作先輩は感激屋さんだから。」
「お元気なのか。」
「痩せておられるけど、ご無事でしたよ。」
「そうか。」
「はい。」
ほっと笑うと、伏木蔵も嬉しそうに笑う。
ああ、時は来たのだ。

左近は忍術学園に職を得た、乱太郎は巷で評判の絵師であり図面屋だ。
住処に薬に金になんせ母校のツテもある。
たった4人で何が出来るか、4人だからこそ周到に準備を重ねた。
戦で忍者隊の組頭が出張るこの数日、2日もあれば充分だった。例え失敗しても、先輩の目の前に辿り着ければそれでいいと数馬は思っていた。

伊作を想い人から引き離す事が良いこととは思えないが、そんな歪んだ愛情に捕らわれているなら自分たちのそばにいて欲しいと思う。
4人で決めたのだ、彼を奪い返そうと。

そう取り戻すのだ、あの幼い日の優しい思い出を。
例え命を賭してでも。
-了-


蛇足あとがき:
壊したものは伊作くんの腕と日常だけでなくて
後輩たちに残されていた先輩との短い時間と
その将来もだと、言いたかったのです。

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