忍者ブログ
カレンダー
09 2024/10 11
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31
拍手
何かありましたら コチラから。
お礼SSS作りました
Booklog
ブログ内検索
P R
フリーエリア
忍者ブログ [PR]
http://oteate.mamagoto.com/
とっくに他人じゃないふたりを 世間が他人に させておく
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

も、本当にタイトルセンス無くて泣けます。
伊作くんが実はすごいんだぞっていう雑伊にしたかった。
でもそれは誰も知らなくていいと伊作くんは思ってそうです。
忍術も武術もそれなりに出来るけど、それなりだからねと笑いそうなあの子は魔性の薬使い。
ああ萌える!って雑渡さんも言ってるに違いない。
ああ萌える!!

あ、来月こそファンブック出ますね!
天の巻、3月10日予定とか18日予定とかWeb上の発売日情報が錯綜していて、書店員も正確な情報が掴めておりません。一応手元にきた案内は10日でしたが…朝日新聞出版さんは前科があるので心配です。
あ、4月に新刊も出ますね!嬉しいなー!

↓ 雑伊SS
タイトル:
惑うなと諭す皆を惑わせて、僕らはこの恋を離さない



通い慣れた町だった。
新しく出来た薬種屋の噂に不審を感じ好奇心も手伝って、顔を出せば暇そうな店員と店主に捕まり世間話。
金持ちの道楽のような風情も見られる店主。薬学を学んでいると言えば、とっときの薬種もあるよければ半端ものでも差し上げようさあさどうぞ奥の間にと誘われそういう趣味の持ち主かと危惧しながらも振り払えずに自分の手を両の手で包みこむ店主の手は、胸に馴染んだ熱を持っていた。
この熱この形この感触に、はっとする間もなく裏まで手を引かれる。戸口の影、表からは見えぬ狭く薄暗い廊下で店主はぎゅうと伊作を抱きしめた。
もどかしく店主の顔の皮をひけば、そうじゃないよといつもの声で手を止められた。
ベリと髪ごと顔は剥がれ、現れたのは見慣れた包帯の片目で笑う愛しい男。
伊作は今度は自分から店主を、店主の振りをしていた男を抱きしめた。

「寝間の用意をしているよ、板の間だと辛いだろう?」
「ありがとうございます、着物を汚さずにすみますね。」
奥の間の戸を開けて誘われるままに、伊作は部屋へ足を踏み入れそのまままっすぐ雑渡のゆるりと開かれた腕の中に捕らわれる。
「そう、衛生的だよ。」
「ええ、素敵ですね。」
見つめ合う視線は無闇に甘く、どちらからとなく顔を寄せ合い、唇が重なる。

「ああ待った。脱がせたいな、いいかい。」
伊作の耳に唇をよせ、吐息のような言葉で雑渡はねだる。
「はい、ご自由に。 」
伊作は雑渡の頬への口づけるようにささやき返し、紐を解こうとして握った紐の先ごと自分の手をするりと雑渡の手の内にすべりこませる。指と指を絡め合い、雑渡は器用に紐を受け取る。伊作の纏う布をするするとほどくように脱がせながら、その頬を首筋を露わにした肩口を唇でたどり、ふふと笑う。

「ご機嫌ですね。」
「そりゃあ、楽しいからねえ。」
雑渡の返事に伊作もふふと笑い返す。
お互いに楽しくて仕方がないのだ。
誰も気にせず昼間から寝床のうえでむつみ合うなど初めてのこと。
ただでさえ少ない逢瀬の、更に少ない甘いひととき、二人が互いの想いを交わしあえる時間が嬉しくないわけはない。そしてこの場所で、二度といまのように人目をはばからずにいられないことも二人はわかっている。
伊作が学園にこの店の存在を報告すれば、必ず学園の目なり耳なりがこの店につきまとう。
わかっている、わかっていて学園のこと伊作がそうすることも承知で雑渡は店を出した。伊作は報告をし、そしてまたこの店を訪れるつもりだ。
偵察と称して。
そして雑渡もまた化けた顔でにこやかに伊作を迎えるつもりだ、自分が雑渡だと明かされぬよう苦心をしてるふりをして。
教師たちにはばれるだろうか。いつかはばれるかもしれない、二人がただただ清い逢瀬を重ねているのだと。
ならばその「いつか」まで、二人は清い他人でありつづけよう。その「いつか」は伊作が卒業した後でなくてはいけないから。唇重ねて視線を交わして繋がり求めあいながら誰より情深く繋がりながら、二人は他人のふりをしつづける。とっくに他人でない互いを、世間は他人にさせたがる。
ならば、そうしてやろうと決めたのだ。

二人は言葉などいらず惹かれ合った。けれど互いの立場故に、不安と戸惑い入り混じり手探りながらやっとたどりついた腕の中、言葉遊びと戯れながら明かされた真の胸の内、これを守るためならなんでもしようと誓い合った。
そんな二人を、世間は他人にさせたがる。
野暮なことだが蹴る馬も無し、僅かな甘い時間を支えに二人は互いの全てを得るために他人行儀な面を被る。そして二人は今宵も別れを告げる、いつも通りに。
「縁があったらまた会おう。」
「お大事に。」
いつもの言葉に微笑み返せば他人の顔で甘い口づけ、名残を惜しむようぬ絡みつく舌にうっかり上気した伊作の頬を撫でるのは愛しい手のひら。駄目ですよと囁けば、うんと頷く素直さが愛しく少し憎らしい。
このひとばかりが大人のようで。

さあないしょの続きだひみつひみつと囁き合って他人同士のすました顔でのれんをくぐれば、店主は丁寧に頭を下げた。
「また御贔屓に。」
「お世話になりました。」
会釈を返し、伊作は暮れゆく空を背に学園へと戻る。今日は薬を無事に持ち帰れるといいなとぼんやり思いながら道を行く。
黄昏時の道を行く。



これが二人の物語。
まだ誰も知らぬ恋物語。
ああ、あなたもどうかご内密に。

-終-


蛇足あとがき:
ここでいう世間は友人含む学園とその関係者です。
皆を嫌いなわけじゃないの騙すわけじゃないの、この恋がひみつなだけ。
タソガレドキ陣は知ってます。
組頭の本気は止められないから口出しは無駄だとわかってそう。
なので厳密にはほんの少しにしか知られて無い恋物語ですね。
ほんと蛇足だなこれ。

拍手

PR
"" WROTE ALL ARTICLES.
PRODUCED BY SHINOBI.JP @ SAMURAI FACTORY INC.