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とっくに他人じゃないふたりを 世間が他人に させておく
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雑伊?SS
タイトル:善法寺先生を怒らせるな

※伊作くんはタソガレドキでお医者さんしてます。
※忍軍専属かもねー。
※雑渡さんはいません。
※山本様と高坂さんと伊作くんがいてます。
※山本様と高坂さんが過保護かもです。
※プラトニックな山高とか高伊とかにそわそわする人向けかも。


命惜しくば、善法寺伊作を怒らせるな。
彼の怒りは狂気にあらず、ただ迷い子の優しさ故よ。
だから誰も咎めはしない、誰もお前を守りはしない。



「小頭、仕事中すみません。」
「高坂か、どうした。」
「組頭がおられませんので、善法寺くんを止めて頂きたいのですが。」
「…珍しいな。」
「寄りにも寄って逆鱗です。」
「お前で止められないのならばもう、いいんじゃないか?」
「あー…すみません、止めてません。」
「…お前ね。」

「すみません…。進んであの目に真正面から見られたいとは思いません、もので。」
「まぁ、わからんでもないがね。」
本気で怒る彼は、我らが組頭ですら苦手にしている程だ。
タソガレドキ忍軍、百余の忍びを従えその命の糸を手繰る男は死神とも鬼とも呼ばれている。
そしてその百余の命の糸を紡ぎ足し、平素は釈迦とも菩薩とも呼ばれる医師・善法寺伊作もまた、時として鬼と呼ばれる顔を持つ。
仏の顔は三度というが人の身ではそこまで寛容にもならぬらしいと山本はひとり納得している。

「で、何をした。そいつは。」
「子殺しを、曰く口止めだと。」
「…。」
はあ、と陣内はため息をついた。
口止め、情報を貴重とする忍者にとって万が一の漏洩を避けるためにそれは必要だったのかもしれない。
けれど、たかがそれだけとあの青年ならば言うだろう。生きる事を尊び命を尊ぶ、特に子供は宝であると彼は言う。生きていれば、悲しい事を辛い事を抱えていても、幸せになる事が出来ると両親を戦で亡くした彼は言う。

「最もただの言い訳でしょうが。」
「…殺された子を見たのか。」
「はい、彼が手当てをしようとするのも見ました。」
「が、間に合わなかったと。」
「女の子供で、服を着ておりませんでした。」
「ああ、それでお前…。」
私を急かさないのかと目で問えば、高坂は目を伏せた。

「もう終わっているんじゃないのか?」
「私が離れる頃はまだ息がありましたが。」
「他に、側には誰がいた。」
「うちの、若い連中だけです。それに痕も残っておらぬので。」
針を使ったと暗に言われ、うーむ、と山本は顎を撫でた。
「あれは、えげつないからなあ。」
「若い連中にはいい釘になりましょう。」
「だといいがな。」

山本が戸を開ければ、泡をこぼし痙攣する男の側にしゃがみこんでいた善法寺伊作が笑顔でふりむいた。
「あ、山本様。」
「おかえり、善法寺くん。」
「はい、帰還の報告が遅くなり申し訳ありません。」
「いや、臨時出張ご苦労様でした。で…」
チラと視線を下にやれば、伊作は首をかしげる。
「それは、どうするね?」
「いりますか?」
「いいや。」
「では、そろそろ息も止まりますから、片付けてもらいますね。」

ふたり、と笑顔のままで伊作が後ろに声をかければ影がふたつするりと動く。
いつのまにやら随分と躾けられたものだと山本は感心する。
杞憂こそすべきかもしれないが、下忍達の伊作への忠誠は組頭へのそれと繋がっている。その比重がふたりどちらかに多くあったとしても結果としては変わらない。心の内は異なろうと伊作が組頭の妨げになることは無い。密やかに始まったはずの組頭・雑渡昆奈門と医師・善法寺伊作の睦み合いは、今や主君に連理の枝よと揶揄されるほどに公認の仲だ。


「組頭が戻られる前に、高坂と湯を使うといい。」
「ありがとうございます。」
組頭の名を出すと、伊作は目を伏せて頷いた。
「汚れていますよ。」
高坂が自分の頭巾を外して伊作の頬をぬぐい、行きましょうとその手を引けば、伊作は頷いて素直に従った。

大人びた横顔をしながらいかばかりか不安定な青年、組頭の寵愛を受けて奢らぬ博愛の医師をどう思っているのか、高坂は時折かいがいしく世話を焼いているようだ。
尊奈門へのとも違う構い方に、まあわからなくはないかと、山本は頭を掻いた。
彼は唯一、我々が躊躇い無く手をさしのべていい迷い子なのだ。その優しさ故にこの乱世の有り様に惑い、それでもと命を救いたがる愚かな優しい迷い子なのだ。

だから、彼を怒らせ傷つけたアレには露ほどの哀れみも浮かばぬ。
まして忍務の最中、欲に駆られた果ての愚挙など言語道断。戦場の狂気すら飼いならせぬ忍者なぞ、このタソガレドキにはいらぬのだ。

 

-終-


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