近頃、擬似親子→恋人？をよく目にするようなしないような。
うさぎドロップはくっついちゃいかんと思うんだが、でも離れるのもやなので、ていうか最終回読んでないんですけどね！
雑伊は親子に見えなくも無いカップルという認識。親子は経て無いの！最初から恋人！っていうか組頭の片思いから始まる…ふふ、映画効果恐ろしいな。

でもまあ、伊作くんが雑渡さんに惚れる理由として『刷り込み』はアリですよね。ね？
大好きな人に育てられて、捨てられて（と伊作くんは思いこんでる）、また出会って他人のふりをしなくちゃいけないのに、どうしてあなたは優しくするの。じれったい両片思い！！

↓　雑伊パラレルSS
タイトル：甘い花の記憶

※小ネタで書いた【子ネタ】雑伊パラレル(雑渡さんが伊作くんを拾った過去がある設定)のつづきもどき
※プラス保健委員たちです。
保健家族っていうか、雑渡さん抜きの母子的保健委員会も大好きなのです。

春が好き。
桜が好き。
だから、花の季節が終わってしまうと少し寂しい。

桜の季節、それ以外にも花を愛でるたびに思い出すことがある。
小さいころ、あの人と一緒にお花見が出来なかったとしょげている僕。
僕は、あの人の仕事の大変さも恐ろしさもわからない幼子だった。

それでも、それだからか、あの人は僕にとても甘くて優しくて、ごめんねと言って桜の形をした有平糖をくれた。
それはとてもとても綺麗で儚げで口に入れてしまうのが勿体無くて、手のひらにのせて陽にかざして表も裏もまじまじと眺めていたら、あのひとは笑って壊さないうちに食べなさいと言った。
勿体無くて食べられないと言ったら、じゃあ私の分を先に食べなさいと僕の口にその甘く綺麗な桜を放り込んだ。甘い甘いその花は、しみしみと僕の口にとけていく。
口をもごもごとさせて手には綺麗な有平糖をのせたまま動けない僕を見て、あの人は楽しそうに笑った。
春とは、桜とは、花とは、だからとても甘いもののように僕の中に記憶されている。
あの甘さはあのひとの優しさで、この学園にいる今はもう届かないものだと思っていたのに。

「お土産だよ。」
季節はずれだけど、そう言って差し出された箱の中には、綺麗な綺麗な甘い桜の花。
あなたは覚えていたの、僕はいらない子じゃなかったの。

珍しくも綺麗な有平糖のお土産を囲んでわあっと歓声を上げる後輩達の後ろで、僕はどんな顔をしたのだろうか。泣き出しそうに見えたのだろうか、彼は僕の頬に触れて困った顔で笑った。
「甘いもの、嫌いになっちゃった？」
首を振れば、不安げに本当？と重ねて尋ねられる。
コクコクと何度も頷いたが、あまり信じてもらえなかったらしい。
「ごめんね、調査不足だ。」
そう言って、僕の頭を撫でて立ち上がると、分配にはしゃいでいる後輩たちの頭も順に撫でて、彼は去ってしまった。
どうして、嬉しいの一言が言えなかったんだろう。
どうして、昔のように好きと言えないんだろう。
他人のふりでも、それくらいは許されように。
僕の舌はどうして、あの人の前だとこんなに、動かないのだろう。

「先輩？」
「これ先輩のぶんですよー。」
「ああ、ありがとう。」
紙のうえには、ひとつの欠けもない綺麗な花ばかりで、僕は欠けているのでいいよと言えば後輩たちは４人で目をあわせ頷きあって、元気よく言った。

「「「「先輩、あーんです！」」」」

そしてひとつづつをいっぺんに、つまり僕の口の中に有平糖４つをまとめてほり込んでくれた。
何事かと目を白黒させる僕に後輩たちは口々に言った。
「なっ悩み事にはっ甘いものです！」
「甘いもの食べると元気になるってしんべえが！」
「こぼしちゃもったいないですよ。」
「お口チャックですぅ～」

赤くなって、元気よく、優しく、楽しそうに、かけられる言葉は、ねえとても優しくて。
口に広がる濃密な甘さに、僕は堪えていた涙をぼろりと零してしまった。
僕の涙に慌てふためく後輩たちを、むぎゅむぎゅっと抱き締めた。

ああ、やっぱりこの花はとても甘いと、僕はまた記憶する。