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よし2つめ!秋のうちにやっとかにゃーってネタです。
頑張って急いでサーチに登録できるだけお話書くぞ。
なんとなく書き方を思い出してきたような。

↓ 雑伊SS
タイトル:彼岸花の向こう

※伊作くん卒業後。もちろん捏造。
※いさっくんに夢見がち、雑渡さんが。
※捏造未来シリーズの設定にしてもいいし。まったく別の話ってことにしてもいい。
※そんな感じです。

上記OKな方のみ、下記つづきをどうぞ。

学園を卒業した彼は、彼岸花に囲まれた家に住んでいる。
彼と先の約束はしなかった。
だが彼がいまどうしているかなど調べるのは容易かった。
彼が何も隠していないからだ。

けれど私は、この彼岸花の向こうに行けずにいる。
彼岸花は毒があり蛇やもぐらなどの害獣害虫を防ぐとされている。毒をもって毒を制す、禍々しくも美しい魔除けの花だ。
彼が忍者になっていようがいまいが、なっていないならなおのこと、私が害になることに変わりはない。
血の色に無明の夜に染まり慣れた自分は濁りそのもの、不浄の毒。
その自覚が私にこの赤い花の群れを越えさせてくれないようだ。

何より私は逃げた、彼から。
彼の瞳が恐ろしくて、百余の忍びを従える組頭ともあろうものが、ひとりの子供の目が恐ろしくて逃げたのだ。
あの子の、いや彼の目がとても清らかで遮るものがなく恐ろしく深いところへ私を誘いこもうとするから。
彼を連れ去ってしまえる日が近づくのが怖くて、彼が選ぶ道が恐ろしくて、逃げた。

けれど気にならないはずもなく、スカウトと称して学園には常に部下を潜ませた。
やがて、彼が忍びにならないと知りほっとした。


そして今、ただ彼を見つめている。


学園に入り込むより余程簡単な事なのに、
私は彼岸花の群れを越えられない。
 

いつの間にか、彼をあの子とは言えなくなっていた。
彼はとても綺麗になって、違う初めからあの子は綺麗だった。
敵味方問わず手当てをする良い子は、命を救う人になろうとしている。毎日飽きずに遠くの町まで教えを受けに駆けていく。不運なのは相変わらずで、しょっちゅう頼まれ事や揉め事にまきこまれる。それでも皆に優しい彼は困った顔で笑うだけ。


彼岸花は、御仏の側に咲く花と誰かは言った。
それは尚更あの子にぴったりだ。
あの子なら、奈落の亡者にすら微笑みかけるだろう。
いつか、その菩薩の如き柔らな手でもって全部救い上げるかもしれない。


けれど自分はきっとその掌には縋れない。
その清らかな瞳を、真正面から受け止めるのは耐えられない。
他の誰かへ向けるのと同じ優しい瞳のままで、絡め獲られるのが恐ろしかった。
どうかもっともっと…もっと…そう、望んで欲しい。
もっと澱んで濁って、変わってくれたら。
私だけを見てくれていたら。


私は彼を攫っていけたのに。



不浄の私は今日も彼を思いながら、彼岸花の群れを越えられずにいる。





「…なんて思ってたのにねぇ。」
ふう、と雑渡はちっとも自分を振り返らず仕事に勤しむ恋人に視線を送る。
テキパキと動き回れば雑渡が結い上げた髪の先がひらひらと揺れる。

まさか、いさから越えてくれちゃうなんてさ。

むしろ斜め上から自分の腕の中に飛び込んできたと言うべきか。
彼は忍の道を諦めてなどいなかった。
あろうことか久方の対面に伊作は「はじめまして」と言ってのけてくれたのだ!あの変わらぬ綺麗な清い瞳のままで!素晴らしい嘘つきだ、なんて忍びにふさわしい再会か!
ああ、自分の目は濁っていた。自分自身を濁りと思っていながら、その濁った目で彼を見通した気でいた。
濁りなど付け入る端から消されていたのだ。あの清らかさは、無色という彼の色だったのだ。
貪欲に全てを得ようとしながらちっとも染まらない、とてもずるくて綺麗な色だ。

あの時のいさの控えめな笑顔のかわいさと言ったら、うっかり殿に目隠しをしたくなる程だったよ。
「幸せ者だよね、私ったら。」
気付かぬうちに落とされた君に、諦めた君に、もう一度恋をした。
したたかで無謀な彼の一面に、雑渡は大人の仮面も理性も脱ぎ捨てた。
溺れる事への躊躇もすっかり消えて、今や2人睦まじく恋を紡ぐ仲。

「幸せ者だよね、私は。」
だからもし君が幸せじゃなくても、もう彼岸花の向こうへは帰してあげない。

 

- 終 -

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