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とっくに他人じゃないふたりを 世間が他人に させておく
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初めての雑伊SSが捏造未来ってどうなのでしょうか。
でも好きなんですパラレル的なものが。
例えばいさっくん30才と雑渡さん51才とか激しくハァハァします。
それはおいておいて、このSSはまだいさっくん20くらいのイメージ。
若い忍者さんが伊作くんに懐いてるのを、組頭が大人気なく邪魔しちゃうところから始まります。

読む前に暗黙設定を以下に、よしOK!って方のみご覧くださいませ。

↓ 雑伊SS
タイトル:恋煩えば毒さえ甘く

※伊作くん卒業数年後、雑伊できあがってます。
※伊作くんはタソガレドキのお医者さん。勤務中は雑渡さんには「組頭」呼び。
※忍軍の年長者さんには「善法寺くん」、若い子には「善法寺先生」で呼ばれてる。
※組頭は仕事中は「伊作」、2人の時は「いさ」呼び…他者の前ではまた変わるかも。大人の事情とかで。


「組頭、私忙しいんですが。」
「うん、だからいさの手を止めたりしてないでしょ。」
「仕事中はちゃんと名前で呼んでください。」
「いいじゃない、今は2人きりなんだし。」
「またそんな…。」
伊作が膝のうえの雑渡との何度目かのやりとりに音を上げ、書から顔をあげれば、障子がカラと開けられた。

「失礼します!善法寺せんせ…あ、く、組頭!」
「先生は取り込み中だよ~。」

何の用だい?と頭は伊作の膝の上に乗せたまま、雑渡昆奈門は首をかしげた。
「し、失礼しました!!」
これでもかという笑顔で医務室に飛び込もうとした若い忍は、直角に方向転換をしてドタバタと駆け去った。
「修行が足らないねぇ。足音たてすぎ。」
「あー、頼んでた書物まで持って帰っちゃいましたよ。」
「うん、ごめんね。」

「僕はいいですけど、入ったばかりの子を驚かせたらかわいそうですよ。」
「いいのいいの。いさのお使いを口実にさぼろうとしてるんだから。」
「でも組頭って、若い子がお好きなんじゃないんですか?苛めたりしたら嫌われちゃいますよ。」
「ヤキモチかい、嬉しいな。私は子供と君に優しいだけだよ。」
めっ、と怒った顔をした伊作に額をペチと叩かれても、雑渡は楽しそうに笑っている。

この調子でさっきの子にも笑いかけたんだろうか、それならさぞ普段との違いに胆を潰したことだろうと、伊作は若い忍に同情した。
この優しい笑顔を自分はとても好きだけど、好きだから、他人にはあまり見せないで欲しいと伊作は思っている。
だからこそ仕事中のけじめはきちんとして欲しいのに。
伊作は膝の上で、ニコニコとしている雑渡の頬をするりと撫でて、ぽつりとこぼす。
「ずるいひと…。」いつも僕ばかりが。

雑渡は嬉しそうに、けれど伊作を見透かすように目を細めて応えた。
「うん、ごめんね。」
けれど君こそ、私だけを見ていてくれない。
君が私だけに優しく私だけを構ってくれれば、私だってこんな子供じみたことはしないんだけどね。


雑渡は自分を撫でる伊作の手をそっと握ると自分の唇に押し当てる。
「苦くありませんか、薬を触っていたんですよ。」
「うん、妙薬だね。舌の先が痺れている。」

ふふ、と伊作が笑う。
「油断大敵です。」

はは、と雑渡も笑う。
「まさか毒とは思わなかった。」
「失礼な、自業自得です。調合の邪魔をなさるからですよ、組頭。」
「まぁいいさ。痺れが取れるまで仕事出来ないから、私動かないからね。」

「あ、わざとですね。山本様に怒られますよ。」
「うん、だから秘密にしてね。」
しーっと、指を立て声を潜める雑渡に、仕方ないなぁと伊作は笑みを返す。
「それじゃぁ、少しだけですよ。」
「うん、おやすみ。」
「おやすみなさい。」

握った白い手を胸に抱けば、もう片方の掌が瞼に当てられ親指が額をあやすように撫でる。
その気配の甘さに雑渡はふふと笑う。

この子が、他の者よりずっとずっと自分に甘くて優しいのだと本当はわかっている。
けれど、どうしても子供じみた嫉妬に囚われずにはいられない。
雑渡の心は、もうずっと厄介な病に侵され続けている。

厄介な心の病は、それを認めて開き直って一応の成就を得た今も、やはり厄介だった。
何故なら今、こうして幸福感を与えてくれている伊作こそ、雑渡の病には甘い毒。特効薬のふりをして、雑渡をずぶずぶと病の沼へと沈めるのだ。
それはとても甘く優しくえも言われない幸福感。例えこれが毒だと知っていても、誰にも渡したくない。
彼がくれるものは全部全て、自分のものだ。
狂気じみた本能をかきたてる恋情と、穏やかな居場所をくれる愛情を、知ってしまえばもう手放せない。
優しくて物分りのいい大人などでいてやるものか。
何もかもを一瞬で失ってしまえる時代だと知っているから、尚のこと。
一度この手を放した子だから、尚のこと。

子供のように嫉妬をして我侭を言うよ、君にだけ。
だから君もどうか嫉妬をして我侭を言って、私にだけ。
誰より優しく誰よりたくさん、甘やかしてあげる。


君の病が、永遠に治らないように。
 

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