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在学中→卒業後の話なことと、タソガレドキで夫婦してないので。)
↓ 雑伊SS
タイトル:願わくば永遠であれと呪いをかける
※伊作くん卒業後。
※タソガレドキにはいません。
※雑渡さんがオトナなようでオトナでない。
自分のせいで伊作を危険にさらしたく無いけど変わって欲しくもない、そんな感じです。
上記OKな方のみ、下記つづきをどうぞ。
「私も君がとても好きだよ。ごめんね。」
そっと重ねるだけの口づけをして、雑渡は離れた。
「私の敵が全部いなくなったら、会いにくるよ。いつか、必ず。」
「雑渡さん。」
「安心して、待っていてとは言わないから。」
「待ってます。ずっと、待ってますから。約束です!」
目を細めて笑う雑渡に、小指を差しだして伊作も笑顔で返した。
涙を止める事は、出来なかったけれど。
「…うん、ありがとう。」
約束だ。
そう囁いた彼の声は泣いているようだった。
キュと絡め合った小指の強さが、今も忘れられない。
懐かしい夢を見たなと、白衣に腕を通しながらふふと笑う。
今も僕は医務室にいる。
新野先生から卒業前に校医見習いの話を頂いて、一も二も無く飛びついた。
以前の僕なら迷いながら、戦場へ巣立ったかもしれないがあの頃の僕はただ彼との約束を守ることで頭がいっぱいだった。
僕はもともと単純な人間で、優しくされたらその人を好きになる。
ましてその優しい人に愛を囁かれたならまんまと頷いたし、大切に大切にされたから永遠に寄り添っていたいと思った。なにせ、僕のような地味で不運な子供相手に愛を囁いた優しいうえに物好きな人など、彼ひとりしかいなかったから。
僕はずっと彼に添うていたかった。
ただそれだけだった、あの頃は。
頭の中が1つの事でいっぱいになって思考が渦を巻いて進まずにいた僕。
近頃の君は戦場に出たらすぐいなくなってしまいそうで手放すことが出来ませんでした、と校医見習いを始めた頃に先生は仰った。
はっとした。
それは、それこそ約束を果たすにも本末転倒で、卒業するというのに1人では何も出来ない自分を思いしらされた。それから僕は少しでも強くあるために、少しでも誰かの役にたてるように、まず1人前になることを目指し、ほんの少しだけ待つ事を横に置いてみた。
そうしたら不思議と時間が過ぎてゆく事が、楽になった。
彼に会えない時間に、彼に頼られる人になれたなら。
胸を張って、隣に立てるようになれたなら、例え恋人でいられなくても幸せだろうと思えた。
彼が生きて僕が生きて、隣に立つことが出来たなら包帯を替えることが出来たなら、もうそれだけで幸せなんだ。
僕は単純だから、開き直ったらもう悩まなかった。
そして今は、恩師の診療所を引き継がれる新野先生に代わり、校医職についている。
まだ不運という欠点は無くならないけれど、彼を待つ僕は幸福だ。
可愛い後輩はまもなく巣立つ。愛弟子のような、実弟のような乱太郎と伏木蔵の旅立ちを見送れて、生徒達にも慕われて、ねえなんて幸福なんだろう。
幸福な箱庭で、僕は彼を待ち続ける。
ずっとずっと。
だって彼と、約束をしたから。
ねえ、雑渡さん。
声のない伊作の呼びかけに、桜の花びらが、くるりと舞った。
「眺めるばかりなんですね」
「うん、君がいた頃からずっとね」
「取られたってしりませんよ」
「その時は殺せばいいことだよ」
「誰を」
「私の敵を」
だって彼と約束したからね。
- 終 -