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↓ 雑伊←伏SS
タイトル:死人にくちなし

※これだけでも読めなくもないですが、前記事の「山梔子」読後推奨。
※初めは、山梔子アナザーのつもりがどうしてこうなった。
※正直詰め込み過ぎです、すみません。楽しすぎてなかなか締められなかった!!…のを無理にぶったぎったりつなげたりしたのが下記です。

※死にネタで始まります、残酷表現は無し。
※伏くん捏造未来あり。

OKな方は続きをどうぞ。


『雑渡昆奈門様』

忍術学園より早馬で届いた、伏木蔵からの書状。
戦の最中、殺気だつ部下達はまた偽書ではないかこんな時に子供の戯れかと騒ぐが雑渡は気にせずに厚みのあるそれを開封する。
ぱさりと落ちたのは、細く束ねられた黒髪。

『こなもんさんにもお知らせした方がよいかと思い、送りました。ごふようでしたら捨ててください。』

ただそれだけ。
何がどうとも、髪が誰のかも書かれていない。
やはり伏木蔵は、伊作くんより忍者に向いてるね。
雑渡は髪をまた書状に包み直し、懐へ入れた。

「さて、お仕事しようか」
その一声で部下達は千里を駆け天地に潜む。戦の焔をその手の内に、雑渡もまた闇と化す。
胸の内にあるものを露も漏らさず、死神の鎌を振り下ろす。


その手が山梔子の花を手折る事はもう、無い。




 * * * * * * * 

 

秋も半ばの頃、ぼんやりとしているなあと思った伊作は倒れた。
幸いただの寝不足で、すぐに回復したが何故かそれから少し無口になった。だが笑顔は増えた、どうかしたかと尋ねれば照れながら幸せだなあと思って、と笑っていた。
伊作が妙に長次になつくものだから、仙蔵と小平太が不穏な動きをする事はあったが概ね平和だった。
伊作はよく転び穴に落ち池に落ち手当てをし薬を煎じ看病をし、日常が戻ってきた。
けれど伊作は卒業を前にして留三郎より先にいってしまった。流行り病が悪化して状態は改善せず、熱でうなされているなと思えばあっさりと死んでしまった。
もっと根性を出せよと、綺麗な横顔に恨み言をぶつけた。


留三郎は毎日寺へ通い、伊作の墓に参る。
何もしてやれなかったからと言いながら。

そして伏木蔵も毎日、伊作の墓へ通った。
留三郎が1年生が毎日来るのは大変だろうと聞けば、伊作先輩が寂しがるといけないから、と答える。
伏木蔵はいつも曲者パペットを抱えている。

保健委員達が連れ立って参る事も多かった。慕われていたのだ、本人が思っているよりずっと。3年生と2年生が、1年生同士がよく連れ立って墓への階段を上るのが見られた。
階段を下りながら数馬は呟く、初恋は実らないって本当なんだね。
左近も呟く、実らなくたって良かったんです。

「うん、充分だったね。側にいられた。」
「まだまだ教わりたい事もあったのに。」
「伊作先輩の巻いた包帯はとても綺麗だったね。」
「綺麗でした、とても。」

初恋だと自覚したのは、彼がいなくなってから。僕達は彼をとても好きだった。それはとても綺麗に2人の胸に、朽ちることなくあり続ける、記憶。

「乱太郎、無理につきあわなくてもいいよ。」
「大丈夫だよ私も行きたいし。」
「そう?2人と約束してなかった?」
「2人にはお墓参りの後って言ってあるもの。」
「そう。」

2人の足音が、単調に響く。
「そんなに心配しなくても、僕は伊作先輩を追いかけたりしないよ。」
「え、わ、私は別に…。」
「嘘、心配してるでしょ。顔に書いてあるよ。」
「う、ん。」
「ありがと。」
「うん。」
「でも大丈夫だよ本当に。伊作先輩と約束したから。 」
「約束?」

乱太郎は意識の戻らない伊作の側を張り付いて離れなかった伏木蔵の事を心配していた。
伏木蔵は、飄々としたところもあるけれど、あの時の思い詰めたような顔はなにがしかの本気を乱太郎に感じさせた。
「うん、約束。僕にしかできないおつかい、すっごいスリルなやつ。」
胸に抱くのは、枯れた花とふたつの恋歌、先輩と僕だけの秘密。
「ないしょだよ。」
伏木蔵がとても楽しそうに笑うので、乱太郎はようやく安堵した顔を見せた。

その後も、伏木蔵の墓参りは毎日欠かされることがなかった。
黄ばんだ包帯だらけの醜い首が供えられる、その日まで。


「組頭、そのまま置いておいたんじゃ鴉が来ますよ。」
「じゃぁ入れてあげて三郎、先輩の桶に。」
「自分でやらないんですねー。そういうずぼらなトコは先代に似て、全く。」

「何年も替えていない包帯なんて触りたくも無い。こんなのの面倒を見られるのは、先輩くらいだね。」
「一応俺も先輩なんですけどねー。」
「安心して、忘れてないから。」
やれやれと、鉢屋三郎は墓場の土を掘り返す。
「いいじゃない、三郎の顔を見れたなら伊作先輩も喜んでくれるよ。」
「惚れた相手の腐った遺骸なぞ、あまり見たくありませんね。」
「三郎は薄情だねえ。伊作先輩は、骨になっても綺麗だよ。」
伏木蔵は雨に濡れながら、楽しそうに笑っている。


山梔子の花を一輪、くるくると回しながら。


 

- 終 -

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