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とっくに他人じゃないふたりを 世間が他人に させておく
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拍手ありがとうございますー
なんだか雑渡さん記憶喪失の段がご好評頂けてて嬉しいです。
ので、調子に乗って続きました!

Web拍手の方からもありがとうございます。
お礼はないのですスミマセン。

 雑伊SS
タイトル:ないものねだり

※伊作くんはタソガレドキでお医者さんしてます。
※忍軍専属かもねー。
※「良薬口に苦し」の続きですので、雑渡さん記憶喪失中です。
※まあ、記憶が無くても雑渡さんですから…ね☆
※なんでか凄腕さん出てます、しゃべり方はフィーリングで私好みになってます。うん、好きなんですよ凄腕さん。

以上OKな方はどうぞー

「そんくれえにしてもらえるか、雑渡昆奈門。」
「なら部下のしつけくらいしておいてね。この人、うちのこ口説きにきたよ。」
「それはすまなかったな。以後注意しよう。よお、別嬪の先生。」
「あ、こんにちは。その後お怪我はいかがですか?」
「伊作くん、こいつも手当てしたの?」
「はいこの間。」
「君、敵方まで治療してるのかい…。」
「でもこの間の相手はドクササコじゃありませんでしたから。」

「そーそ、偵察してたらたまたまな。なー。」
ニコーっとらしくもない笑顔の凄腕に伊作も、ねー、と頷き返した。

というのが1刻ほど前。


面白くない。
気分転換にと誘われ出かけた祭りで、仕事絡みの相手に会った事もだが伊作が気安くしているのもされているのも気に入らない。
帰路からずっと今まで膨れている雑渡をなだめるように、伊作は言った。

「でも初めに雑渡さんが仰ったんですよ。」
うつ手は多い方がいい、て。

「知り合いは多いにこしたことがないでしょう。」
にっこりと笑いながらお茶をくれるこの子に、こういうところかなと納得をする。
都合がいいくらいの甘さと控えめさ、母親のような寛容さ、医師の厳しさ、手当ての手際の良さ、そして時折チラリと見えるしたたかさ。
今まで周りにいなかった子だよね、だから私はこの子が気に入っていたのはなんとなく理解出来る。いい年をして、甘やかされたり叱られたり、しかも裏切られる心配もないらしいのはとても居心地が良い。
堕落しなかった私ってエラいなあ。

身内と離れ暮らしている、あるいは天涯孤独の若い者が籠絡されるのも頷ける。色の手管についてこの子は意識無意識はわからないがとても優れている。自分の人の良さにつけこませ、弱さを見せてそれでいて差し出された手を容易くは取らずに、もどかしく人の情を突いてくる。
しかも技量と味方である点において私・組頭のお墨付きを持つ絶対の味方で、今の私にしてるのと似たような構い方をしてるとしたら、これは堪らないだろう。
みんなのお姫さまみたいになるよねえ。
けれど、何分好みではないのだ。
可愛いらしいより妖艶な方が好みなんだけどなあ、私。伊作くんはあまり劣情をそそるタイプじゃないし。
可愛いけどね、うん。
結構好きだし。

側に置く事に否はないのだ、医療班については考えていたし専門性も人柄も申し分ないうえに治療に関してはよく気がつく、重宝出来るし手放すのは損失でしかないだろう。けれどそれは、部下や主治医やもしかしたら小姓としてで、あの子と自分がかつてあったような相思相愛の伴侶関係になるのは…無理がある。

「どうしたものかな~。」
「心配なさらなくても、僕は別の部屋で休みますから。雑渡さんはゆっくりなさってください。」
知らず声に出していたらしい、気が緩んでるなあと頭をかけば伊作は苦笑してなにやら荷物を作り始める。
「尊奈門さんが不寝番なのでお部屋を貸してくださるそうなんです。傷が、それ以外でも痛むようでしたら呼んでください。」
「うん。」

優しくて、気丈な子。
この子は私に泣き言を言わない、涙どころか溜め息ひとつ零さない。
静かにそっと張り詰められた心をかつての私なら解きほぐしてあげられたのか。そもそも私が記憶喪失なんかにならなければ、張り詰める事もなかったのだけれど。
ふう、と、私は今日何度目かのため息をつく。
ため息をつくと幸せが逃げると言ったのは誰だったろうか。

「君は泣かないんだね。」
「はい?」
「私の記憶が無いの、悲しくない?」
ああ、と頷いて伊作は雑渡の正面に座り直した。
「悲しいし、寂しいですよ。」

「でも泣かないの?」
「はい、泣きません。」
「意外と強い子なんだね。」
「いいえ、まさか!」
笑う伊作の頭を撫でると、やはり笑ったままで涙は見られなかった。

「あなたと約束しました、あなた以外の前では泣かないと。」
「だから、今の私の前では泣かないの?」
「はい。」

伊作はにっこりと笑った。
その笑顔が今にも崩れそうに見えるのは、悲しいからかそれとも泣いて欲しいと思う雑渡の思い込みか。
かわいいなあ。
一途な若者が眩しくも恐ろしくもあった。いっそ見返りを求めていてくれたなら。
雑渡は自分の為にあって自分のものでない伊作を、とても欲しいと思った。
人のものほど、なんとやら。

手を伸ばせば手に入る、けれど、決して得られない。
「どうしたものかなあ。」
伊作の前では気が緩むのか雑渡はまたぽろりと呟く、けれどため息は呑みこんだ。
ため息をついて、逃げる幸せはきっと目の前のこの子のような顔をしているだろう。
優しく笑う、優しい子。
健気で一途で、今にも切れそうな蜘蛛の糸のように危うげな子。
だけどちゃんと強かな、とてもとても綺麗な子。

このまま逃がしてしまうには、なんだかとても惜しいのだ。
「どうしたものかなあ。」
伊作の頬に掌を当て、猫の子にするように指の背で撫でれば、彼はくすぐったそうに首をすくめる。
「ねえ、どうしたらいいと思う?」
「何をです?」
「君が、欲しいなあと思って。」

おやまあ、と目を丸くして伊作は雑渡の手を両手で握り締めた。
「全部差し上げますよ、あなたのものです。」
「でも君は私の前では泣かないんだろう。」
「ええ、でも泣いてしまいそうです。」
目尻を赤くして、震える声で伊作は言った。
「最初の夜と同じ事を仰るなんて。」
嬉しい、と囁いて雑渡の右手を自らの頬へ首へその下へと滑らせた。
衣がはだけて誘うように白い鎖骨が肩が、晒された。

にんまりと、雑渡は笑う。
かわいい獲物は理性を捨て恋慕に負け自らを差し出した。
それなら、食らいつくのが礼儀だろう。
指を腕を絡め合い、唇重ね楔を打って、全身全てを嘗めつくし匂いをつけて歯型をつけて誰にも晒せぬ身体にしよう。

可愛いこの子が綺麗なこの子が私だけに泣いて縋って、決してどこにも行かぬように。

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