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とっくに他人じゃないふたりを 世間が他人に させておく
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本ジャンルサイトの方で二股宣言したので、ちょっと気が楽になりました。
二股さー!二股だともさー!だってサディ菊も雑伊もがっつり好きなんだもん!!

で。
なんかこう、伊作くんを好きじゃない雑渡さんって思いつかないので、時間を戻してみるしかないかなと…だってあの出会い方で出会ったら好きにならない方がおかしいというか!
ほんでまぁ、お仕事上のお手当てしてもらう関係だと、恋はしない…か?な?なんて思ったので書いてみました。特にオチはないけど、山本様と雑渡さんの会話は楽しいなあ。
また書きたい。
根掘り葉掘りどこがいいのねーねーって下心無しでむしろ冷静に聞く雑渡さんとか変で面白いです。書いたの自分だけど。これは楽しい。


↓ 雑伊SS
タイトル:良薬口に苦し

※伊作くんはタソガレドキでお医者さんしてます。
※忍軍専属かもねー。
※小頭といさっくんは仲良し。尊くんいません。
※出番はないけど鉢屋三郎がいるらしいYO!

頭が重い、それでも知らぬ気配に意識を無理やりに浮かび上がらせた。
薬の匂い、湯気を含んだ空気、顔にあてられる乾いた布。
その手の主に敵意は無い。
体が動かないのでさてどうしようかと気配を伺えば
「気がつかれましたか?」と声をかけられた。

聞き覚えの無い声、しかし声音に滲む親しさに見知った人間かと錯覚しそうになる。
観念して目を開ければ、やはり見知らぬ白衣の青年が微笑んでいる。

「薬が効いていますから、無理に動かないでくださいね。」
“山本様が指揮をとっておられます。鉢屋があなたの代わりを、それ以外はあなたの指示どおりに。”

鉢屋衆が噛んできた事にいぶかしんだが陣内の事も見知るなら、この青年は敵ではないらしい。
矢羽根に頷けば、青年の顔が至近距離まで近づき自分の匂いを嗅ぐようにして、離れた。
「呼吸が安定してきましたね。熱も下がっているし薬が抜ければ直に起きられましょう。」
もう少し休んでくださいね、瞼に手をかざされて、沈むように眠りに落ちた。


「容態は?」
「まもなくお目覚めかと。」
「そうか。まぁ、君がついているのに心配する方が無粋だろうが。」
「いえそんな。ただ…」
“問題が?”
“お顔つきに違和感が”
“別人が?”
“いいえ、ただ、僕を不審げに見ておいででしたので”

おやばれていたのか、頭上での声に雑渡は目を開ける。
「おかえり陣内。お務めは終わったかい?」
体を起こせば、青年が背を支え羽織をかけてくれた。
「ありがとう。」

「恙無く。残りは鉢屋がひきつけております。」
まもなく、戻るかと。
「あー…そう、鉢屋衆に借りを作るのは嫌だったんだけどなぁ。」
「は。」
「大丈夫ですよ。鉢屋には口止めをしておきました。いずれは気取られましょうが、今はまだ。」
大丈夫、という青年の言葉に陣内も頷いた。
青年が発した内容にも、陣内との話しに口を出した事にも、陣内がそれを制さない事にも、雑渡はいぶかしんだ。
「でも、鉢屋なんだよね?」
じっと顔を見る雑渡の視線を、逆に捉えるようにして青年は雑渡の目を覗きこんだ
正面から雑渡の視線に臆さないその行動に、雑渡は関心を覚える。
すべすべした彼の頬をひっぱってみようかなと思った途端に視線は外され、
「山本様、確定です」
「そのようだね。」
はぁ、と陣内は大きくため息をつき青年は頬に手を当て困った顔をしている。

「お頭、私の名前はわかりますね。」
「陣内。」
「そうです、では彼は?」
陣内が目で示した先にいるのは、先ほどから至れり尽くせりで看護に当たってくれている青年だ。
勿論味方なのだろうことは雑渡にもすぐ察せられたけれど。
「…うちのお医者さん?」
「はい、善法寺伊作と申します。」
「殿のお声がかりです。出自も腕前も、心配は無用です。」
「うん、心配はしてないけど。」
手際いいし、と言えば青年医師・伊作は嬉しそうに笑った。

「殿への報告は、数日様子を見て、戻らないようでしたら僕から致しますね。」
「すまない。」
「いえ、お気になさらず。」

狐の面を被せられた雑渡は、急ぎの務めもないようなのでおとなしく座っている。
陣内の言うところによると、自分の記憶と現在の日付は5年ほどもずれがあるというのだ。
その間に陣内の趣味も変わったのだろうか、まあ確かに男でもこの子は色白で黒髪の美しい子ではあるけれど。

「2人仲良しだね。」
「誰のせいですか。」
「いい奥さんだねって褒めたつもりなんだけど。」
「誰が誰のですか。」
「この子、陣内の奥さんじゃないの?」
雑渡は、自分の包帯を巻き換えてくれている伊作を顎で示した。

「陣内が男の子に宗旨替えするとは思わなかったけど、私は気にしないよ。」
「記憶が戻ってもフォローしてやらんからな。」
「素が出てるよ陣内。」
「善法寺くんはあんたの嫁です!」
そして雑渡がどれだけ周りを振り回しアプローチをかけたか、やきもきさせたかを苦い顔で教えてくれた。

「そうなの?」
首を傾げて、自分の嫁だと言われた医師を見たが、綺麗な顔をした彼は困ったように笑っているだけだった。
「ったく、そういうわけで、ここにいる限りあんたは絶対安全だから、動かんでください。俺は戻ります。」
「うん。いってらっしゃい。」
「お気をつけて。」

 


「はい、いいですよ。肩を回してみてください。」
ゆっくりですよ、と促されぐるぐると腕を回せばつっぱる感じはない。
皮膚が繋がっているからもあるだろうが、包帯が負担にならないというか、うまくバネの役目を果たしている気がする。
「伊作くん、君すごいんだねえ。陣内が目をかけるだけある。」
「元保健委員ですからねー、これだけは自信あるんですよ。」
いや、医者が包帯巻くのだけ自信があるってどうなの?と思いつつ、見直したのは事実なのでとりあえず話題を変えることにした。。

「ねえ、君は嫌じゃないの、今の私を。記憶も無いし恋人らしいことも言わないし。」
「そうですねえ、前のあなたのように触れて下さらないのは寂しいですが、そんな物言いをなさるあなたは結構好きですよ。新鮮だし可愛いし。」
「かわいいいいい?」

ふふ、と笑って、伊作は続けた。
「それに、さっきからずっと私の話を全部きちんと聞いてくださっているでしょう。お仕事の事は仕方がないとしても、手当てや養生についてまであなたはいつも僕の言葉をのらくらかわしてしまうんですもの。だから嬉しいんですよ。例え品定めのためでも。」
「伊作くんって結構大人だねえ。」
「そうですか?嬉しいな。あなたはいつもひとりで背負ってしまうから、早く大人になりたかったんですよ。」
「まあ20も下なら子供扱いするでしょう。」
「そうですね、あなたは優しいから。」

優しい?雑渡は怪訝な面持ちになる、自慢であるが情より忍務を優先するし人でなしな事も相当こなしているつもりである、まあ多少義理堅いのは性分だが、それでも優しいと評価される人間でないのは自分が一番よく知っている。
この子に優しいと言われるほど体裁を作っていたというのなら、それだけの価値がこの子にあるということか。

「でも僕ももう20ですし、ひよっこ扱いならともかく、大人扱いはして頂きたいんですけどねえ。」
「あ~でもさ、その私は伊作くんに夜のお務めはさせてたんでしょう。一応大人扱いなんじゃないの?」
「あはは、そうですね。夜は、大人扱いになるのかな?合意のうえなので、お務めなんて思った事ないですけど…。」
「そうなの?」

「一応、恋仲ですから。」
「うんそれは聞いたけど。嫌じゃないの、20も上のおじさん。しかもこんな体だし。」
「あなたこそ。」
伊作は雑渡の問いに答えず、尋ね返した。
「僕なんかのどこが良かったんです?」
「さあ、どこだろうね。」
とぼけたような返事だが本当にわからないので仕方が無い。

「じゃあ本当に伊作くんは私を好いてるんだね。」
ええ、と伊作は苦笑する。
「そんなに尽くしちゃって、後で泣かされたらどうするの。」
「今も結構泣かされてますよ?」
「あ、そうなんだ。」
やっぱりねー、と雑渡は頷く。

「でも好きなのかい?」
「はい、お慕いしておりますよ。僕にはあなたしかいませんから。」
「へえ。」
物好きだね、と言わんばかりの当人からの視線に伊作は苦笑する。
「学生の頃なら板挟みなんて事もありましたけどね、身内もおりませんし、口説かれたのもお慕いするのもあなたが初めてで、あなたしか知りません。」
「だから、私だけ?」
「はい。」
「じゃあ君は、私のものなんだ。」
「正確にはこの腕と技は殿のものですけど、それ以外はあなたのものですよ。」
「ふーん…。」
殿もお気に入りだというのはこういうところかな。一応割り切るとこはちゃんとしてるんだねえ。
「私も君にそういう事言ったのかい?」
「そうですねえ…言わぬが花にしておきましょうか。」
「え~。」
「知りたければ、早く思い出してくださいね。」

にっこり笑って薬湯を差し出された。
うげ、と雑渡は覆面を下げる。

「これ毒じゃないのが不思議な苦さなんだけど。」
「良薬口に苦しと申します、甘い方が逆に毒かもしれませんよ。」

しぶしぶと雑渡が湯のみを口へ運ぶのを伊作は嬉しそうに見ている。
恋人というより母親のような視線はとてもくすぐったくて、けれど不思議と居心地がいい。記憶にない自分は、これに溺れてしまったのだろうか。
危ない危ない。

口のなかの苦味だけが、雑渡を正気と結びつける。
 

- 終 -

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